バンコマイシンTDMとは
TDM(Therapeutic Drug Monitoring:薬物血中濃度モニタリング)は、薬剤の血中濃度を測定して投与量を個別最適化する手法です。バンコマイシンは腎排泄型の抗菌薬で個体差が大きく、TDMが特に重要な薬剤の一つです。
2020年にASHP/IDSA/SIDPガイドラインが改訂され、従来のトラフ値管理からAUC/MIC 400〜600を目標とする管理法が推奨されるようになりました。トラフ15〜20 mg/Lを目標にしていた方法は腎毒性リスクが高いとされ、現在は2点採血によるAUC算出が標準とされています。
AUC/MIC法の基本
なぜAUCで管理するのか
バンコマイシンの殺菌効果はAUC/MICに依存します(濃度依存性+時間依存性)。AUC/MIC 400以上で治療効果が期待でき、600以下で腎毒性リスクを抑制できます。
2点採血のタイミング
- 採血1(早期サンプル):点滴終了後 1〜2時間(ピーク側)
- 採血2(後期サンプル):次回投与0.5〜1時間前(トラフ側)
ツールの使い方
① 患者情報入力
年齢・体重・身長・性別・血清クレアチニンを入力します。CrCl(Cockcroft-Gault法)が自動計算され、母集団PKパラメータ(CL・Vd・ke)が推定されます。
② 初回投与設計(Tab1)
目標AUC/MIC(通常500)を選択すると、推奨投与量・投与間隔・予測ピーク/トラフが自動計算されます。定常状態の濃度-時間グラフも表示されます。
③ 投与シミュレーター(Tab2)
任意の投与量・間隔を入力して、期待されるAUC・ピーク・トラフをリアルタイムで確認できます。投与設計の比較検討に活用できます。
④ 実投与シミュレーション(Tab3)
実際の投与スケジュール(日時・投与量・間隔・回数)を複数入力してシミュレーショングラフを作成。採血結果を入力すると個別PKパラメータを推定し、補正後の濃度曲線が表示されます。
⑤ AUC算出・投与量調整(Tab4)
2点採血の結果(濃度・点滴終了後時間)または真のピーク・トラフを入力して個別AUC/MICを算出し、目標達成のための推奨投与量を提案します。
採血タイミングのポイント
| 項目 | 推奨 |
|---|---|
| 採血時期 | 定常状態到達後(3〜5回投与後) |
| 早期サンプル | 点滴終了後 1〜2時間 |
| 後期サンプル | 次回投与 0.5〜1時間前 |
| 目標AUC/MIC | 400〜600(推奨中央値 500) |
腎機能とTDMの関係
バンコマイシンは腎排泄(80〜90%)のため、腎機能低下患者では投与間隔延長・減量が必要です。CrCl < 30 mL/minでは投与間隔を36〜48時間以上とすることが多く、透析患者では透析後投与が基本となります。
ただし、急性腎障害(AKI)回復期には腎機能が急速に改善することがあり、定期的な再評価が必須です。本ツールの腎機能計算と連携して、変化のたびにTDMを再実施することを推奨します。
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